ジェフベックを最初に聴いたのは中学生の頃だ。それ以降、市販されている彼の音源はたぶん全て聴いて来た。中学生当時、レコードはなかなか買えない経済状況だったのでFMラジオの番組をラジカセで録音して何度も聴いた。一番最初に 聴いたのは、記憶の中ではたぶん第一期ジェフ・ベック・グループの監獄ロックで、ボーカルはロッドスチュアート。そう、ロッドスチュアートはジェフベックグループのボーカリストとして音楽の檜舞台に上がったのである。このアルバムはソロ(ジェフ・ベック・グループ)としては2枚目のアルバムで、1枚目の「トゥルース」、そして2枚目の「ベック・オラ」と聴くと、彼の音楽的ルーツがブルースであることが良くわかる。
その後の第2期ジェフ・ベック・グループの2枚のアルバムは、いきなりファンクやソウルなどの黒っぽいサウンドに大変身。13歳でギターを始めて、ブリティッシュロックに傾向し始めた中坊にとって、新たなジャンルの音楽への入り口になった。
彼は、もうこの時点で時代の何歩も先を行くギタリストで、中坊のギターキッズは、ジャンルも何も取っ払われた彼のギターサウンドの虜になって、毎日ベックのギターをコピーしまくり、練習しまくるのである。
その後、高校受験も無事終わり、市内の高校生を集めてバンドを結成、時代はまさにBBA時代!(ほんまか?)で、2枚のアルバムもコピーしまくって、おまけに人丸小学校電気クラブ出身の電気オタク少年は、自作のトーキングモジュレーターまで作って、「Superstition」や「Black Cat Moan 」な気分に浸った(笑)この曲はライブでは演奏できずに、自作のトーキングモジュレーターは日の目を見ることはなかったが、ライブでは「Sweet Sweet Surrender」や「I'm So Proud」などのバラード曲と「Lady」ををやったような記憶がある。余談だけど、カーマインアピス(d)の影響か、当時一緒にバンドやってたドラムが当時ツインバスやってたのを思い出した。
そして、体中に電気が走るような衝撃を受けたのが、75年に発売された「Blow by Blow 」と言うアルバム!このファンキーなリズム!何本ギターが入ってるかわからない程のギターサウンド。何よりも明石の片田舎のギター少年に届いた新世界の窓!あのBBAライブのアルバムからたった2年で、全く世界観の違うサウンドを世の中にぶつけた彼は「俺のギターについて来れるかい?」と言わんばかりであった。特にオーバーダブで入っているギターのサウンドは聴けば聴くほど面白い、色々な音が入っていて、ベックのこだわりとかアイデアが凄いことが良くわかる、そしてギターでの音作りはこうするんだよ!ギターキッズ達!と言っているような、そんな気がするのである。
そして極めつけは翌年のアルバム「ワイヤード」である。これぞジェフベックサウンドの最高傑作!ギター界の金字塔とはっきり言える、歴史に残る作品であり、後の多くのギタリストやフュージョン(当時はクロスオーバーと呼ばれた)ミュージシャンに与えた影響は大きい。
いまだにこのアルバムは色あせず、作品としても楽しめるし、ベックのギター研究と言う意味でも、彼らしいベック節も随所にちりばめられたアルバムで、ヤンハマーのシンセプレイも光る、ロック系フュージョンのギター作品として、ギタリストは必聴のアルバムである。
そんな彼の実際の演奏に触れたのはギターキッズからギターオヤジになって久しい2009年2月の大阪厚生年金会館でのライブだった。メンバーには、ドラムにヴィニー・カリウタ、そして若手女性ベーシストのタル・ウィルケンフェルドを起用してのライブ。晩年の彼のスタイルはトレモロアームに軽く指を掛けたまま、ピックを使わず親指のみで弾くスタイルで、親指のタッチとアーミング、ボリュームコントロールが一体となったギタープレイは、まさに職人技と言える領域で、現物を双眼鏡で見た私は「譜面は起こせても、サウンドのコピーは不可能」と思ったものである。
そんな彼のプレイをそろそろもう一度見てみたい、聴いてみたいと思っていた矢先飛び込んできた訃報。ジェフベックのギターサウンドと共に過ごした青春時代を思い出したりしながら、数日は彼のギターに浸っていたいと思う。
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